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ジャズ講座3、「基礎って どこまでが基礎なの?」

僕が31歳で音楽の仕事に復帰した時、ある先輩ミュージシャンから言われた言葉が「木下君は音楽の基礎が出来てるからプロとしてやっていけるよ。ただ、基礎ばかりにとらわれててももダメだけどね。」でした。
この「基礎ばかりにとらわれててもダメだけど」って言う言葉は、僕の中で今でもすごく印象に残っています。
確かに、ジャズにしても、感性のおもむくままに、また瞬間瞬間の思いつきや閃きで、あたかも音楽の基礎なんて関係無いって、言われているかのようなプレイもありますよね。
それとか、譜面に忠実なだけで、全くグルーブやノリが出せていなかったり、躍動感が無かったり、歌えなかったり、、、etc
(余談ですが、ウエス・モンゴメリーや譜面の読めないジャズメンは一杯いますね。素晴らしい演奏を残していますが)
これらのことを考えた時、基礎にとらわれることの弊害というのでしょうか、、
先輩の言われた言葉が、ある面当たってるなと思える部分もあります。
しかし、今までに生徒さんのレッスンを通して見て来たこと、またセッションなどでも他のプレイヤーを見て感じることですが、ジャズと言うより、音の出し方の基本が出来ていなかったり(楽器を鳴らしこなす技術)、アンサンブルする上での基本的な知識が少なかったり、ジャズやポップスのリズムの基本概念を学んでいないと感じさせられる場面に本当に良く遭遇します。
例えば、ドラマーだったら、スティックの振り上げ幅ばかり大きくて、実際の出音が小さく楽器がほとんど鳴っていない(リストやフィンガーのコントロール、つまりスティックコントロールの基本の研究・練習不足)。
左右の振り上げる高さや音質が違いすぎて、出音が一定せず不安定になってしまう(これもスティックコントロールの基本の研究・練習不足)。
ウッドベーシストだったら、弾く時に身体ばかり動いて実際の楽器が鳴っていない、その為アンプに頼って音を増幅しようとする(アタック音の重要性・楽器を鳴らすことを理解していなかったり、一音一音の安定感・ベース本来の役目を良く理解していない)。
ピアニストに見かけるのが、足でタイムキープをしていても、実際のパルスとズレている(タイムキープ本来の目的が分かっていない、またはグルーブ・ノリを身体でつかんでいない)。
ボーカリストだったら、声量の無さをマイクの音量でのみカバーしようとする。バンドに音量を落とすことのみを要求する(声楽の基礎を学び直してみるなど)。
他にも、ベテランのプレイヤーの中にも、音楽理論やジャズの理論には長けているのにリズムのことに無頓着な為、タイムキープ等が甘くリズムが乱れてしまう。拍が短くなってしまったり間伸びしたり(ジャズ・ポップスのリズム概念の基礎の研究、グルーブ・ノリの重要性の理解)。
全部の面で完璧なプレイヤーはなかなかいないかも知れませんが、ある面ジャズだから許されるみたいな、ジャズはいい加減に演奏しても形になると勘違いされているなら困ったものです。
ジャズは、ジャズ特有の音楽形式もあり、その表現にはジャズに特化した勉強ももちろん必要です。
ただ、ジャズに限らず、音楽の基礎をしっかりやった人は、ある面どのジャンルでも成功して行ける下地が出来るのではないかと思います。
過去の偉大なプレイヤーは、そのプレイを分析したら、フレージングは音数が少なくシンプルなのに、出音がしっかりしていて説得力があるからだったりもします。(人柄も伝わるものですが)
むしろ長くやってきた人ほど、基本に立ち返り、基本(基礎)の大切さ、基礎を磨いて行くことの意義が分かるものかも知れませんね。

※文中に「ポップス」と書いていますが、ポップスのグルーブ・ノリもスウィングのグルーブ・ノリも、具体的な表現は違いますが、グループやノリを生み出すという点では同じです。兄弟みたいなものでしょうか。
古い言い方では「西洋音楽(洋楽)」=「ポップス・ジャズ」みたいな。

こちらもご参考まで。
ジャズ講座2、「ドゥーバは楽し♪/バップのすすめ」
ジャズ講座1、「ジャズ演奏ステップアップの為の参考文」

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    • チャーリーパーミー
    • 2013年 5月 22日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    ブログを拝見してとても勉強になりました。
    私はジャズピアノを練習しています。
    記事にある『出音』について質問させてください。
    ピアノのタッチの強さ、と、出音のしっかりさは
    同じような意味でしょうか。それとも何か違いがあれば
    教えてください。よろしくお願いしますm(,,)m

    • きのつね
    • 2013年 5月 22日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    チャーリーパーミー さん コメントをありがとうございます。
    タッチの強さと出音の関係についてですが、タッチの強さだけを取り上げても、アタック音の強さ・どれくらいのスピードで鍵盤に指を叩くかなどで音の状態が変わってくると思います。
    また出音についても、これは様々で、アタック音だけでなく、音を伸ばしている間の手の状態、音を切るときの状態など、色々な要因が重なって音色が変化していると考えられます。
    また、出音は小さいけどしっかりとした音やアタック音を入れたまま音量を落とす等もあり得ます。
    文面ではこれくらいしか伝えられませんが、色々と研究してみて下さいね。

    • チャーリーパーミー
    • 2013年 5月 22日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    分かり易く解説していただき有り難うございます!
    小さい音量でしっかりした音を出すのは
    難しそうですね。タッチが強いか弱いかの問題だけでは
    ないってことがよくわかりました!
    ジャズ講座の続編を楽しみにしています。

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